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しばらく歩くとマンションに着いた。彼女が入り口で何かするとエントランスのドアが開き、しばらく進むとエレベーターの前に着いた。
少し顔をあげると、彼女もびしょ濡れだった。乗り込んだエレベーターから降りて、少し歩くと彼女は扉の鍵を開けた。
「さ、入って。そして、玄関で待ってて」
彼女はササっと可愛いサンダルを脱ぐと私にそういった。
彼女が奥に消えると、途端に思考が回り始めた。見ず知らずの美人に手を引かれるまま家にやってきてしまったのだ。何やらよくない考えが流れ星のように頭を流れていく。少しいやらしいことに頭が差し掛かった時、彼女が戻ってきた。
「ボーッとしてるけど大丈夫?」
私はそんな考えもあって大げさに身体を震わせてしまった。
「ゃ、ぇ、はぃ」
必死に声を絞り出す。彼女はそれを聴き終えると足元にバスタオルを敷き出した。
「ほら、タオルの上歩いてね。とりあえずお風呂入っちゃおう」
「お、おふっ!」
「あはは。風邪引いちゃうよ、そのままだと」
私はうつむいたまま彼女に手を引かれた。
「ほら、ここにカゴ置いておくから濡れたの中に入れちゃって。お風呂はお湯沸いてるから入ってあったまってね」
彼女はハキハキと喋り続けた。
「バスタオルと着替えは、出るまでに用意しておくから」
私の絞り出すような返事を聞いた彼女は脱衣所を出ていって扉を閉めた。
洗面所の大きな鏡に映った私は、思ったより小さくて何よりびしょ濡れだ。
体に張り付く服を震える手で脱ぎ、籠にいれた。籠に服を入れるたびに湿った音が響き、なんだかそれがとても滑稽に思えた。
素っ裸になると、途端に開放感が襲ってきた。でも髪を解くと湿った感触が背中に走り、その開放感が少しだけ現実に変わった。
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