0人が本棚に入れています
本棚に追加
その後、彼女の入れたコーヒーを飲みながら二人でいろいろ話をした。彼女の話はどれも面白かった。
高校の頃、寮で相部屋だった先輩と夜中に脱走してアイスを買いに行った話や、中学の頃日替わりで男子たちに告白された話、初恋の男性から久しぶりに連絡があったら結婚式の招待でなんかガッカリしてしまった話、上司のセクハラ発言にセクハラで返したら思いっきり凹んでしまい同僚と励ます羽目になった話、友達の勧めで大学のミスコンに出たら準優勝して副賞の学食の割引券をその友達と山分けした話。
私も自分の話をできるだけ話した。彼女が特別面白いと言ってくれたのは、学校の図書室でイチャつく上級生に図書室でイチャつくカップルは別れる、と言ったら別れてしまった話だ。彼女は大笑いしてこう言った。
「呪いじゃ、ガリ勉の呪いじゃ!」
何が面白いのか分からなかったけど、私も一緒に大笑いした。
二人して喉が枯れるほど笑って、話が途切れたとき、ふと二人で外を見た。
雨は上がって、空は晴れやかに赤く輝いてた。
「おー、綺麗だね」
「そうですね。真っ赤っか」
夕日に染まった空はあの傘のように綺麗に赤く色づいていた。
「私ね、実家に帰るんだ」
唐突な告白だった。
「え?」
「ちょーっと田舎なんだけどね」
それはここからは遠い場所だった。
「あはは、なんていうのかな。寂しくなっちゃって」
彼女は遠い目をして微笑んだ。
「私も寂しくなります」
「へ?」
「進藤さん、居なくなると、私も寂しい」
彼女は目を丸くして私を見た。そして私に抱きついてきた。
私も彼女もしばらく放心していた。お互いの息遣いだけが聞こえる。
「ありがとね」
彼女はそういうと私を離して立ち上がり、部屋を出ていった。心臓がドキドキいっている。
しばらくすると彼女は私の服を持って帰ってきた。
最初のコメントを投稿しよう!