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 狭く暗い路地に、ウィリアムの笑い声が木霊していたが、ようやく衝動がおさまったのか、思わずこぼれた涙を拭った。 「あぁ、すまない。俺はどうやら見くびっていたようだ。リヒト君といったね。いいだろう。きみにはラング家の裏の当主として、役目をこなしてもらおう」 「お、お待ちください殿下! 私が、私がやります!」  我に返ったメサイアが、ウィリアムに縋る。 「弟を危険な目に遭わせるわけにはいきません! 私が裏の当主となり、リヒトを表の当主に!」 「だめだ」    しかし間髪いれずに、王子は却下した。 「メサイア君。きみは社交界を知らないわけではないだろう? リヒトくんがそういう場に出れば、利用しようと群がってくるぞ」 「っ」  ラング家は弱小貴族ではあったが、メサイアとリヒトの父リセラが、一代で男爵から侯爵まで地位を上り詰めた経緯を持つ。そのため、その権力にあやかろうと、リセラと共に舞踏会に出席したメサイアに、多くの欲にまみれた貴族たちがやってきたことがあった。
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