第一章 幽霊司書の友情論

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 私がこの学園に転入する前にいたのは、地元でも有名な私立の難関進学校だった。  テストの前後はピリピリした空気が漂うし、不正行為は無論、停学か退学のどちらかの処分に容赦なく結びつく。  身に覚えのない密告に対して、私は無実を訴えた。  私がカンニングしたという証拠は目撃証言だけだった。  しかし無実を証明する手立ても、私が主張し続けることしかなかった。  学校側とのやりとりは平行線の一途をたどった。  あまりに一方的な学校側の言い分に激怒した両親が、法的措置をとることをほのめかしてやっと、先生は渋々私の言い分を認める形で上辺だけの決着がついた。   でも、一度染みついた疑惑と悪評を完全にぬぐうことは難しい。  案の定、周囲の私を見る目は180度変わった。  疑心と好奇、そして侮蔑。いわれのない中傷と疑惑。  今まで仲の良かった子は当然のように私を避け、先生たちが私に向ける眼差しには冷ややかなものが混じるようになった。  当然、私に納得のいく顛末ではなかった。  だから次の試験で結果を出して、見返そうと思った。  けれどもそうやって意地になって学校に通っているうちに、体調が崩れ始める。  誰かの視線を感じるたび、教室でひそひそと囁かれる陰口を耳にするたび、私は目まいや動悸、腹痛を起こすようになっていた。
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