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第三章 名もなき本と文化祭
高等部にあがって二年目の春、私は思いがけず生徒会執行部の一員となった。
遠山先生のすすめで図書委員長に就任したためだ。
「学園祭の出し物で何か案がある人は、挙手してください」
中等部から高等部まで集まった委員会のメンバーを、壇上から見回して言うと、少し場がざわついた。が、相談タイムとみなして多少の私語は注意しないでおく。
夏休みも差し迫った七月の半ば。
図書委員会では毎年この時期、学園祭の出し物を協議して決める。
「三階の閉架書庫でお化け屋敷は!?」
「駄目です。楽しそうだけど、書架が傷つくかもしれないから」
初等部男子の提案を、遠山先生がすかさず却下した。
「図書棟を閉め切って脱出ゲームとか」
「怪我人が出る恐れがあるため、駄目です」
「ブックカフェはどうですか?」
「……個人的にすごくやってみたいけど、残念ながら館内は飲食禁止です」
毎年、十一月の文化の日から翌日まで二日間にかけて開催される、時邱学園の文化祭……通称「大青春祭」。
学祭には毎年、図書委員会も何か出し物を出す。
と言っても、クラスや部活で出し物に出る子たちはそちらを優先してもらうことになっている。
だから地味な展示や朗読劇など、自然と地味で人手が少なくて済む出し物になりがちだ。
去年は宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』の朗読劇、一昨年は確か視聴覚室で映画の放映会だった。
最初の熱がさめると、次第に意見も落ちついてくる。
展覧会、朗読劇、映画の放映会、各家庭で本を持ち寄ったり、図書館の除籍資料(リサイクル資料)を使った古本市。
その四つの案から多数決をとろうとしたその時、中等部の瀧さんがおずおずと手を上げた。
「あ、あの……怪談会ってどうですか」
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