《出逢い》

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《出逢い》

この春、志望していた大学に合格し、晴れて都会の一人暮らしが始まった。 家族と離れる寂しさもあったけれど、今は一人の自由を満喫している。 高校の頃からの日課早朝ランニングを大学生になっても続けていた。 土手沿いを走っていると… 途中の小さな橋の下にホームレスが段ボールで作った簡易家が見えた。 都会はホームレスの人があちこちにいるって話だけど、本当にいるんだな… そう不思議に思いながらも、その場所を通り過ぎていく。 そんなある日、その住人らしき男が自前の段ボールハウスの前に立っていた。 ひょろっと細く、気弱で優しそうな雰囲気の男。 「おはよう」 近くを走り抜けると…気さくに挨拶してくるホームレス。 「おはようございますー」 何気ない始まりだった。 服はボロボロ、裾は土で汚れ、髪や髭は伸び放題のボサボサ、ぱっと見、みすぼらしい姿の男だけれど挨拶されれば返さないのは失礼だ。 明るく返事を返しながら走り去る。 その後も、ホームレスのおじさんとは同じ場所で毎朝会った。 その都度挨拶を交わし、お互いの様子を窺うようになっていく… そのうち、一言二言会話を交わすように… 「大学生?」 「はい、一年っす」 「そうか、頑張れよ」 「うぃーす」 そう優しい笑顔で毎朝手を振る名も知らぬホームレスのおじさん。 その笑顔になんとなく好感が持て、近所に知り合いもいなかったため、毎日会うのが楽しみになっていた。
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