《夢の時間》

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《夢の時間》

風呂を終えて、もう時間も遅いためあとは寝るだけ。 「じゃ一緒に寝ましょうか」 「え、一緒に?」 「今時はフツーですよ!」 若者はスキンシップが過剰と勘違いしているあずまに、その設定で押し通してみる。 「そうか、でも狭くないか?」 「あずまさん細いんで余裕っす」 またまた、簡単に信じる天然なあずまに、密かにきゅんとなりながらも、ベッドへ横になるよう勧める。 「そうか、こんなオヤジと一緒に寝るなんて嫌じゃないのか?」 「全然、あずまさんがどうしても嫌なら俺が床で寝ますから、ベッド一台しか無いし」 「いや、それなら、私が床でいいから」 「俺と寝るのそんなに嫌っすか?」 「そうじゃない、けど寝相が悪いかもしれない」 「大丈夫!」 「人のそばで、寝たことがないから」 「じゃ試してみましょうよ」 そう促すように肩を抱いてみる。 「…わかったわかった、ありがとう」 押しに弱いあずま、苦笑いしながらも頷く。 「さ、入って」 「こんな柔らかな寝床は久々だ」 ベッドの端へ仰向けに横になり、布団の感触を味わっている。 「よかった、ゆっくり休んでください」 その横へ潜り込みながら、あずまの方を向いて囁く。 「何から何まで、ありがとう」 チラッとこちらへ視線を走らせ、小さく微笑んでお礼を伝えてくれる。 そうして邪魔にならないように壁側に向いて寝ようとするあずま。 「いえいえ」 頭を撫でたくなるほど可愛いおじさんに、困りながらも緩く首を振る。 「やはり、眠って起きたら、全て夢なんじゃないかと不安になるよ」 「じゃ、もっと寄って来てください」 「ん?」 「こっち!温もり伝わります?」 そう壁に寄っている華奢な身体を引き寄せて、身体を寄せ合う。 「敬大くん…あぁ、温かいよ」 「この熱は冷めません、夢じゃなく現実だから、ずっとここに在ります、安心して。また明日、おやすみなさい…あずまさん」 後ろから優しく抱き寄せながら安心させるよう囁く。 「うん、おやすみ、敬大くん」 「おやすみ」 温かい、敬大の体温を感じながら眠りにつく。 明日、朝になっても、変わらぬ温もりを感じることができるだろう。 けれど、それに慣れてはいけない。 いつかは出ていかなければならないのだから。 孤独で、寂しいあの場所へ… だから、決して慣れてはいけない、この温かい日常に…屋根のある生活に… 敬大くんが負担と感じたその瞬間、この夢は簡単に終わってしまうのだから… ただ今は、この温もりを、特別な時を… 幸せと感じる気持ちを素直に受け入れて、夢の時間を過ごしていくのだった。
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