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《貴方が大切》
あずまは両手が不自由だから、手伝う為、一緒に入浴するようになった。
俺の貸した服を脱いで、風呂に入ろうとするあずま。隣で服を脱ぎながら様子を見ていると…
「ッ、あずまさん、背中…痣が」
腰から背中にかけて転々と痛々しく青痣が出来ていた。
「できてるか?今日殴られたからな、そのうち治るよ」
日中、殴る蹴るの暴行をうけた時の痣だ。
「大丈夫?」
「あぁ、気にしなくていい、このくらいは良くあることだから」
「よくあるって…」
「もう少しイカツイ見た目ならそんなことも無いんだろうが、私は貧相だからな、殴りやすそうにみえるんだろう、知らない人に腹いせのように殴られたりすることもある」
「あずまさん」
「君みたいに優しい人間は稀だ」
「そんなこと、」
「死ぬ前に神様が、君と巡り会わせてくれて、少しだけ幸せな時を私にくれたんだろう、君の優しさは一生忘れないよ」
「あずまさん、お別れみたいに言うなよ、ずっと一緒にいていいから!」
「ありがとう。君はいい子だ。世の中は常に理不尽なことで溢れている、敬大くんがその波に晒されないことを願っているよ」
「あずまさん、」
「さ、入ろうか」
いつものようにタオルで前を隠しながら浴室のドアを開き呼びかけてくる。
「あずまさん」
そっと痣だらけになった身体を後ろから抱き寄せる。
「敬大くん?どうした?」
「あずまさん、俺、良い子なんかじゃないっす、俺のこと子供扱いしてるなら、いつか痛い目見ますよ」
「敬大くん?」
「……」
「敬大くんちょっと、離し…」
「……、嫌です」
「?」
「…あずまさんを傷つけたくない」
「ありがとう、そんなことを言ってもらえるとは…」
「貴方が大切なんです」
そっと耳元で囁く想い。
「……なんだか、告白でもされている気分だな、こんなおじさんが年甲斐も無く喜んでいたら滑稽だ」
後ろから抱き締める、力強い腕に触れ…小さく微笑む。
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