恋する損益分岐点ーシェルブールの雨傘ー

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「それで、いつ行く?」 「は?」  良次は大きな瞳で、うろんそうに俺を見た。 「だから、パートナーシップ証明。引っ越しもしなくて良いし、いつでも行けるよな?ま、やってなかったら引っ越しするだけだけど」 「……」 「そこ、引く?感動するよなッ?あっ、プロポーズとかいる?でもリングの時にプロポーズした?待て、ふつう結婚ってどういう手順ですんの?えっ、あれっ?」 「もう一生悩んでろっ!」  スタスタと先を足早に歩き出した良次の声は冷たかったけど、その頬は紅潮していていつになく可愛かった。  さっきまでの冷静さとのギャップで、俺は身悶えそうになる。 「すんげぇ照れてんじゃん!かわい……」  良次は、慌てて、俺の口を掌でばふっと塞いだ。  白い肌が薄赤く染まって、濡れたような瞳で、これは俺だけに見せる顔。  その腕を取って、俺は傘を指したまま、良次に向かい合った。 「俺、親のことも諦めないで頑張る。良次も協力してくれてるし。良次がいたら、きっとやれそうな気がする」 「うん」 「ずっと一緒に生きたいんだ。俺が選んだのは良次だから」 「うん――」  良次はぎゅっと傘の柄を握りしめた。夜の雨の中、その手は白くなっていて、俺はその手の上に掌を重ねた。 「隼斗、帰ろう」  見つめ合ったまま、うなずいた。  俺たちは並んで傘をさして、二人の家路をたどっていった。  たとえ夜の雨の中でも、隣に傘を並べる人がいて。  あなたが好きだから世界は、今夜もこんなに優しい色をしている。

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