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「あの、あなたは?」
「名乗る必要はない」
「聞き間違いじゃなかったら、私のすべてってことだけど。間違いならごめんなさい、えっと、ナンパじゃなくて、野盗ってことでいいのかな」
「……。……ああ」
何その間。まゆりは、ゆったりしているように見せつつ、必死に頭を回転させる。
そして、ごそごそと自分の懐を探った。
唯一持っていたのは、夕食のとき、おやつにしようと残しておいた乾燥無花果だ。
まゆりは、それを漆黒の鎧へと差し出した。
「私をあげることはできないの。私は、これから魔法使いになるんだから」
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