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「斎藤くんのことが好きです」
校舎裏で斎藤は額に手をあて空を仰ぎ見た。これは予想外だった。
目の前にいる女の子は一週間前、傘にいれてあげた女の子だった。
その日から妙に視線を感じると思ったら、急に呼び出されてこれだ。
相合傘したくらいで相手に惚れるだなんて、西浦の計画通りで呆気にとられる。何も言わない斎藤に焦れたのか、女の子が「あの」と言い募る。
「付き合っている人、いないんですよね。だったら」
誰にその情報を聞いたのかと問い詰めたかったが、昼休みの西浦のにやけ顔が頭に浮かんだ。帰りに問い詰めてやると決心しながら、斎藤は女の子に向きなおった。
「興味ない」
それだけ言って斎藤は女の子に背を向け帰ろうとした。
しかしその背に女の子が追いすがる。
「な、なんで!? 私あなたのこと」
そういって斎藤の裾を掴んだ女の子の手を、斎藤は乱暴に払いのける。
女の子がビクッと体を震わせた。
「うっとおしいんで。それじゃ」
そう言い捨てると、女の子は「最悪!」と金切り声を上げた。
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