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「なぁ」
傘を隠してから2日たったある日、クラスメイトの宇井(うい)に話しかけられた。
「ん?」
「常和さ、こないだ空き教室入ってかなかった?」
ギクリとして、宇井の顔を見ると俺の目をじっと見て真面目な顔をしてたからおそらく疑われてる(いや、完全にバレてる)のだろうと察した。
「…あぁ、うん。」
「くだらないことすんなよ。」
「…うん」
去り際に肩をぽんっとされ、怒ってるわけじゃないっていうのは伝わってきた。
同い年から真面目に注意されるって言うのは想像以上に恥ずかしく、それからの俺はそういうことをすることは無かった。
この時のことを考えると今だに宇井に感謝してもしきれない。
その後、自分で隠した傘を持って先生に言いに行った。
俺はあまり目立った行動はしないようにしているから怒鳴られるような叱り方はされなかったけど、それなりに怒られ、佐原にも直接傘を返し謝った。
「俺が傘隠した。ごめん。」
「…」
「なんか言えよ。」
佐原は黙って下を向いたまま傘を受け取り帰って行った。
━━━━━━━━━━━━━━━····
それからというもののやっぱり佐原はクラスでは浮いた状態で一年あっという間に過ぎていった。
2年、3年では同じクラスになることは無く、受験シーズンをを終え卒業式を迎えた。
「常和~みてみて!第二ボタンとられた!」
「彼女いるやつはいいな、くそ笑」
「おーい!3の1写真撮るぞー」
「「おー!」」
なんて最後の思い出作りをして、みんなにお別れを言いさて帰るかと学校に背を向け歩き出した時…
「と、常和くん!!!」
聞きなれない声で俺の事を呼ぶ一人の男。
佐原がいた。
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