月曜ロードショー

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 白黒のハチワレ猫が長いしっぽをピンと立て、テーブルと椅子の脚の間を縫って七瀬の足元までやってくる。 「え、ね、猫っ?」  恵は目を丸くして猫の行方を目で追っている。 「あ、もしかして聞いてなかったか。アレルギーとかじゃないよな」 「アレルギーでは全然ないけど……びっくりしただけだから……大丈夫」  そしてよろよろとふたたび椅子に腰を落ち着けた。  七瀬はそんな恵の様子に苦笑を浮かべつつ、割烹着を外し「よいしょ」とハチワレ猫を抱き上げた。一歳を過ぎたばかり、という年頃の雄猫だが、体はもうかなり大きい。というより、すでに肥満の域だ。 「ごめん。何も聞いてなかったんだな。猫が一匹いるんだ。弦助(げんすけ)っていうんだけど。こいつ台所は立ち入り禁止なんだ。そこの扉、開いてると入ってきちゃうから、悪いんだけど気を付けて」 「う、うん」  と、頷きながらも恵の目が弦助をじっと捉えて離さない。  ひょっとして動物は苦手だっただろうかと心配になる。  拾われたのは弦助の方が先だし、彼はすでに家族だ。かといって恵のことも今更捨ててくるわけにはいかないから、アレルギーではないのなら多少我慢してもらうほかはないだろう――などと七瀬が考えを巡らせていたところ、恵がおずおずと切り出した。 「そいつ、触っても平気?」  予想外の申し出に、七瀬は目を丸くした。  恵の顔はどう見ても〝カワイイ猫ちゃんに見惚れていました〟という表情ではない。どちらかというと〝恐々としている〟に近い。 「大丈夫だけど……なに、猫、好きなの?」  尋ねたものの、恵のそれは到底好きという顔ではない。 「いや、分かんない。飼ったことないんだよね」   そして、まさにおそるおそる。  弦助に手を伸ばし、その短い被毛に触れる。  その瞬間緩んだ恵の表情に、七瀬もついつい和んでしまった。  恵は何度かその柔らかい毛の上に優しく掌をすべらせたあと「ありがと」と言って手を引っ込めた。  色々と――「もういいのか?」とか「気になるなら吸ってみろよ、癖になるぞ」とか――言葉が喉元まで迫っていたが、弦助がキッチンにいるところを他の住人に見つかると厄介だ。 「見つけたら遊んでやってよ。懐っこいし、噛んだりはしないから」 「うん……」 「じゃ、俺もう行くから。学校、遅れずに行けよ?」 「うん」  弦助の尻を抱える手とは反対の手をひらりと振って、七瀬はキッチンをあとにした。
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