月曜ロードショー

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 どうやら懐かれてしまったらしく、恵はお勝手に立つ七瀬の後ろに立ってじっと調理の様子を見守っている。 「おい。他にすることないのか?」  振り返りもせず突き放すように言ったつもりだったが、鈍感なのかわざとなのか「うーん、今は特に」とのんびりした返事が返ってきた。 「荷物取ってきたんなら整理するとか――」 「整理するほどの荷物はないかな。あ、そうだ。ねえ。そういえば洗濯って、ここでさせてもらえる? 武士さんにスウェット返したいし――あ、こういうときってクリーニングに出すもん? その方がいいかな」  ろくでもない男だが、こういうところにやはり育ちのよさを感じる。世間知らずのアホのボンだが。  「いいだろ、別に。そこまでしなくても。洗濯、こだわりないんだったら出しといてくれたら、朝俺の分とまとめて洗うし。ただ気を付けてはいるけど、弦助の毛がついたりするから、気になるようなら近くにコインランドリーあるからそっち使って。あ、二層式でよければ裏にある洗濯機、まだ現役だから。あれ使ってもいいよ」  にんにくを薄くスライスする手を止めずに簡単に説明をするが、恵の「二層式って?」の言葉に思わず手を止めて振り返った。恵のきょとんとした表情は少年っぽさを残しつつも、絶妙な色気がある。 「見たことない?」 「ない、かな……」 「まあ、使ったことある人は少ないだろうけど……。小学校の社会科とかでやんなかった? あれ、生活だっけ。高度経済成長期の三種の神器とか? ……あー、あれは中学か? まあなんでもいいけど」 「うーん、聞いたことはある気がする」 「そうか、まあお前の年考えたらそうかもなあ……」  七瀬がしみじみ呟くと、恵がからりと笑い飛ばす。 「何年寄りみたいなこと言ってんの。そんな変わんないっしょ。ていうか七瀬さんっていくつなの?」  二十歳と二十七歳は全然違うだろうと思いながらも、簡潔に「27」と答える。 「えっ、27?」  あからさまにぎょっとした様子の恵を、七瀬は睨みつけた。  実年齢より若くみられるのはままあることだが、その驚きようは一体何歳だと思われていたのか。 「何だよ」 「あー……思ったよりはいってんな、と思ったけど……。でも、やっぱそんなに変わんないじゃん」 「いや、全然違うだろ……」  七瀬は呆れて笑った。 「邪魔だから部屋行ってろ。飯できたら呼ぶから」  恵は不服そうに「え~、何か手伝うことない?」と殊勝なことを言っているが「ないない。これが俺の仕事なんだから、大人しく待ってろ」と台所から追い出した。  憎めないやつだ。  七瀬は口元に笑みが浮かべ、腹をすかせた若者のために夕食の支度に戻った。
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