2人が本棚に入れています
本棚に追加
僕の名前は『成瀬 元翔(なるせ げんと)』、高校卒業後プロ野球のドラフト3位で中日ドラゴンズに指名されて入団し、4年目を迎えている外野手だ。
入団1年目は2軍でプレーしていたが2年目から1軍入りし、3年目からは主に5番バッターとしてスタメン出場できるようになっていた。
入団3年目に入るオフシーズンの頃、名古屋市内の僕が住んでいる賃貸マンションの近くにある小さな赤ちょうちんの居酒屋にふと足を踏み入れてみると、その居酒屋の女将さんから、
「成瀬君?」
と突然声をかけられて、プロ野球選手としてはそんなに目立つ存在ではない僕の名前を知っていることに驚いた。
「はい、そうです。」
と僕が答えると、
「どうぞどうぞ、おかけになって…」
と言って快くカウンターの席に招き入れてくれた女将さんの笑顔は今でも忘れない。
この頃からオフシーズンや試合が休みの時は、この店にたびたび顔を出すようになり、かれこれ1年半ほどこの店に通うようになっていた。
僕はこの店の雰囲気が好きで、また女将さんが作る手料理が家庭的な味で、何故かホッとするから好きだ。
何よりも女将さんが僕の母親のような存在で、なおかつ大のプロ野球好きで中日ドラゴンズの大ファンだということを知ったことも、僕がこの店に通うきっかけになったと思う。
1年半も通っていると常連の他のお客様とも顔見知りになり、この店の女将さんとお客様が僕のことを応援してくれるようになった。
この店には『和奏(わかな)』さんという女将さんの実の娘さんがいて、一緒に店を切り盛りしているようだった。
女将さんのご主人も一緒に店に出ていたようだが、5年ほど前に病気で天国に旅立ったということだった。
最初のコメントを投稿しよう!