カスケイド

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カスケイド

「社長になって飲み方が変わったね」 と彼女は俺に言った。 「俺は何も変わってないさ。俺を見る目が変わってしまっただけだ」 俺は疲れた二つの眼球を指で押しながら、ソファに体を預けた。 「どうしたの…。今日はお疲れみたいね…」 店のママ、ミチは俺の横に座り自然に膝に手を添えて来た。 「そりゃ疲れもするさ…。毎日毎日、金、金、金って…。もう自分の金以外の心配するのはまっぴらだ」 その言葉にミチはクスクスと笑った。 「経営者じゃないとわからない事ですものね…。私も同じだわ」 ミチは汗をかいたグラスを手に取るとハンカチでその水滴を拭った。 「たまには女の子でも抱いたら…」 俺は我に返り、ミチを見た。 それに気付いたのかミチも俺を瞬きしながら見ていた。
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