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「なぁ、秋連。ナカメシグルリアンとオストアンデルって知ってる?」
1時間目と2時間目の間の休み時間。
周囲で楽しそうに談笑するクラスメートたちを横目に読書に耽っていた俺は、忠成からそんなことお構いなしといった調子で話しかけられた。
「ナカメシ……?」
それほど大声で声を掛けられたわけではないのに、俺の耳はよほどコイツの声が好きなんだろう。
忠成が口を開いただけで、周囲の喧騒が一瞬にして消し飛んでしまう。
しかし、容易に俺の鼓膜を占領したその声も、発せられたのが耳慣れないふたつの単語となると、殆ど頭に入ってこなかった。
「ナカメシグルリアンとオストアンデル」
そんな、疑問符だらけの俺の様子に嬉しそうにニヤリと笑うと、忠成がもう一度その言葉を繰り返す。
「何だ、それ?」
何となくその言葉のニュアンスから外国ものの食べ物かな?と思いはしたが、再度言われたところで頓珍漢な響きでしかないそれらの単語は、何の像を結ぶこともなく呆気なく消えた。
ますます困惑した顔をした俺に、忠成が満足そうに微笑む。
「お前も絶対食ったことあるって!」
俺が降参するのを心待ちにしているのがありありとうかがえるその表情が余りに可愛くて、俺はそう思っているのを表に出さないよう苦労した。
「んな、変な名前のモン、食ったことねぇよ」
それで声がつっけんどんになってしまったのだが、それを気にした風もなく忠成が言う。
「俺も最初そう思ったんだけどさ、実物見たら知ってたんだ」
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