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その奇妙なものの正体を言いたくて堪らないんだろう。
忠成は俺を見て目をきらきらと輝かせていた。
「で、結局何なんだよ、それ……」
その顔を見ているとこっちまで表情が緩んでしまいそうで……それに気取られないよう、わざと素っ気無い素振りでそう告げると、俺は読みかけの本に視線を戻した。
勿論、こんな状態で文字なんて追えるはずはないのだが――。
「ぼた餅と饅頭」
しかし嬉しそうに告げられたその言葉に、俺は思わず忠成の顔を凝視してしまっていた。
「は……?」
はからず漏れた声とともに疑問符満載でそう呟けば、
「“中飯グルリ餡”と“押すと餡出る”」
言いながら得意そうに手近な紙にそう走り書きをして
「上手いこと言うだろ? おじさんが考えた名前なんだ」
ニヤリと笑う忠成。
その顔が余りに可愛くて……俺は彼が告げた言葉の内容のバカらしさを言及する気になれなくなっていた。
ついでに、言葉のニュアンスから、てっきり外国モノの菓子か何かだろうと思っていた自分の浅はかさにも目をつぶることにした。
End
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