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10月の走り。
学校からの帰り道、長いこと放置されたままになった空き地の前を通ったら、伸びるに任せた草にまぎれて白い花が咲いているのが見えた。
よく見れば、それは小さな白い花の群れを、花火の火花みたくポッと散らせたように咲かせた野性味溢れる植物だった。
野草らしいふてぶてしさで、丈も優に1メートルはあろうかという大振りな植物。だから茂り放題の草たちの中にあってもふと目に留まったんだろう。
秋の気配を漂わせ始めた景色の中、時折吹き抜ける風にその身を揺らせる様は、その外観とは裏腹にどこか繊細に見えた。
(何か似てる)
その花を見ていると、ふと幼友達の顔が思い浮かんで、忠成はおのれの思考回路に思わず苦笑した。
(怒られそ……)
口が裂けても小さな花を見て――それも綺麗な花とは到底言い難いような野の草を見て――「お前の顔が思い浮かんだ」なんて言ったら憮然とした顔をされそうだ。
そう考えたら、伊達眼鏡の奥で光る冷たい視線までありありと脳裏に浮かんで、忠成は思わず身震いをした。
(そういえば……)
明日は秋連の誕生日だ。
彼の誕生日にプレゼントを忘れず渡そうが渡すまいが、常に不機嫌そうな仏頂面をしている印象の幼なじみ。
それならば、と思いニヤリと口の端を歪めると、忠成は制服の裾が汚れるのもお構いなしと言った調子で草っ原に分け入った。
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