94人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
秋連の所業に、忠成は一瞬悲しそうな顔をした。
その顔に驚いた秋連が、慌てて謝ろうとしたけれど、それよりほんの少し先に忠成は駆け去って行ってしまう。
それを、秋連はただ呆然と見送った。それからうつむいてぎゅっと両の拳を握ると、誰にも聞き取れないぐらい小さな声で「ごめん」と呟く。
忠成に酷いことをしてしまったと思っても、素直になり切れない秋連は、みんなが夢中で芋を掘っている間、畑に背を向けてしゃがみ込んでいた。
目に溜まった涙をこぼさないよう身じろぎもせず。
そんな秋連の上に、不意に小さな影が落ちた。
「あきちゅら! おイモ、あきちゅらのもほってきたよ!」
その声に振り返ると、両手一杯に大きなサツマイモを抱えた忠成がいて、秋連は目を見開いた。
その拍子に、こらえていた涙がポロリと地面に落ちる。
「あきちゅら、どっかイタイの? ケガしたの?」
そんな秋連に思わず手を伸ばそうとして、その手が汚れていることに気付いた忠成が戸惑ったように動きを止めた。
その忠成を、立ち上がってぎゅっと抱きしめると、秋連は
「ありがとう」
そう言って満面の笑みを浮かべた。
折角汚さないようにしていたおろしたてのスモックが、忠成を抱きしめた瞬間泥だらけになってしまった。
でも、不思議と気にならなかった。
抱きしめた忠成から香ってくる、泥のにおいとお日様のにおいがすごく心地好いと感じられたからかも知れない。
カット/雪様(スモック柄の犬と羊のみ鷹槻れん)
End
![6a5e6f27-4d4f-4cb8-98f6-9d8b9d236e04](https://img.estar.jp/public/user_upload/6a5e6f27-4d4f-4cb8-98f6-9d8b9d236e04.jpg?width=800&format=jpg)
最初のコメントを投稿しよう!