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激動の年
真冬の朝、柔らかく温かい羽毛布団の上に毛布を上にかけても寒さを感じて目を覚ます日々が何日も続く。冬であればこんな朝は珍しいことではない。
だが、その日ばかりは寒さで目を覚ます必要はなかった。
その日の朝、どぉん! と、言った音と共に家が揺れ始めた。家の揺れが熟睡していた私を微睡みに変える。その微睡みは気持ち悪くゆーらーゆーらとボートの上のいるかのように揺れる家によって一気に覚醒状態へと促される。私は何がなんだか分からずに布団の中で恐怖にその身を震わせながら伏せて揺れが収まるのをじっと待つ。
揺れが止んだ。私はモグラが地面から出るようにゆっくりと布団の中から出る。早朝で空も白けているせいか窓から入る光は僅かで部屋もまだ薄暗くどのようになっているのかは分からない。覚醒状態とは言え起き抜けの状態でまだ頭もぼーっとしている、それに伴い体の動きも鉛のように重い。そんな鉛の体を奮い起こし立ち上がり頭上にある照明の紐を引っ張った。照明がパチパチと数回の点滅の後に完全に点けられ、カーテン越しの僅かな日光しか入らなかった私の部屋に照明の激しい光が与えられた。
「なんだこれ」
私が見たのは愕然とする光景であった。勉強机のラックに立てかけてあった教科書や参考書は全て倒れ、机上は散々たる状態。本棚も中に入れられていた漫画本が倒れ本棚の前には漫画本が散乱し、椅子に引っ掛けていたランドセルも床に落ちて中に入っていた今日の授業に使う教科書が無残に散乱する。何があったのかも分からずに布団の上で呆然と立ち尽くしていると、母が血相を変えて私の部屋のドアを思い切り開けてきた。
「大丈夫?」
「うん…… 大丈夫だけど…… 何があったの?」
「地震よ」
私はテレビの電源を点けた。いつも観ている朝の情報番組の小洒落たスタジオではなく、地味なスタジオでアナウンサーが神妙な顔をしながら「気をつけて下さい」「関西地方で大きな地震が」「淡路島を震源とし」などと言っていたがその当時まだ小学生だった私にはよく分からないことであった。
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