赤いリップグロス

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「はい、はい、皆、ホームルームを始めますよ」 担任の教師が教室に入ってきて手を叩いた。 良かった。もっと何か言われたらどうしようかと思った。 体育は3時間目だ。先週サッカーをやったので今日も同じだろう。今日も僕は居ないものの様に扱われるのか。胃が更に痛く、苦しくなっていく中、予感が現実となって僕に襲い掛かる。 いじめは高校に入って直ぐに始まったので、今年で2年目か。いつになったら逃れる事が出来るのだろう。 如何にか学校を終わらせ、夕方、トボトボと家に帰る。母はデパートで働いているので帰りが遅い。僕は鞄の中から家の鍵を取り出し中に入った。 汗をかいて気持ちが悪かったので、顔を洗う為洗面所に入る。すると何故か母が忘れたリップグロスが置いてあった。何となく試しに付けて見る。色白の肌に真っ赤な色が映えて綺麗であった。僕は、ついつい自分に見とれてしまう。
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