泣いちゃった

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泣いちゃった

 卒業式が終わって私は友達と寄せ書きをした。みんな別々の大学や専門学校へ行ってしまう。だから会いたくても簡単には会えなくなる。だから思いを全部卒業アルバムに書いた。他に男子の卒業アルバムにも友達と押しかけて書いた。  悪ふざけで教室は騒がしくなってる時、あの男の子から呼ばれた。二人で教室を抜けて、校舎の裏道に。誰もいない中で男の子は言った。 「長谷川さん、渡したい物を渡すね」  私はちょっと悪ふざけの余韻で忘れ物とか落とし物とか言った。でも、男の子ははにかんで端に置かれていた一つの植木鉢に歩いて行く。その植木鉢にはチューリップが咲いていた。 「俺、先生から許可をもらってこのチューリップを育ててたんだ。ちゃんと咲いて良かった」  チューリップ。その意味を理解した時に、私の胸は高鳴った。チューリップの花言葉。それは色で違う。でも、日陰だから明確な色は分からない。 「前に花言葉の話し、したよね?」  私はうんって返す。男の子はチューリップが咲いている植木鉢を持って戻ってくる。本当に綺麗に咲いているチューリップ。そして、色も分かった。その色はーー。 「何色か、分かる?」  私は涙を溜めて小さく首を振った。私は色弱で、ここ日陰だから、なんて言って。そしたら男の子は「じゃあ俺が言うね」って言ってくれた。 「赤だよ。真っ赤なチューリップ。意味はね」 「「愛の告白」」  私も涙声でハモった。男の子はキョトンとしたけど、すぐに笑顔になると植木鉢を置いてハンカチを出してくれた。 「分かってないフリはずるい。ちゃんと言い直すから涙を拭いて」  私はハンカチを受け取って涙を拭いた。そして男の子はーー。 「長谷川さん。俺は君のことが好きだ。付き合って下さい」  告白してくれた。でも、私は都会に行っちゃうよって言ったら男の子は微笑んでくれた。 「大丈夫。そのために自由が効くトレーナーになったんだから。長谷川さんが言ってた地域にした。電車もあればバスもタクシーも沢山あるところに」  嬉しかった。誰も、何も頼れる人なんていないって思ってたのに。そして私なんかのために彼は……。  だから私は聞いた。 「一緒に、いてくれる?」 「もちろん。君に寂しい思いはさせないよ」 彼は静かに私を抱きしめてくれた。
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