受かった

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 私は長谷川(はせがわ)ゆり。高校3年生。  ついさっき、担任の先生から「会社の内定が出た」って教えてもらって安心してるところ。  教室で友達に伝えたらお祝いをしてくれた。  でも、友達はまだ受験生。私だけ就職を選んだ。  理由は簡単。家が貧乏だから。だから就職の道を選んだ。  先生は「奨学金を使ってでも」とは言ってくれた。だけど、私は親に負担をかけたくないから断った。  仕事も高卒で受けられるところなんて限られるし、仕送りのことも考えた。だから都会で、会社に寮があり、工事をする電気系の会社を選んだ。残業をすればもっとお金をもらえると思ったから。  この事、友達は知ってる。でも、クラスメイトのほとんどは知らない。こんな話つまらないだろうから。    だから男の子には一人しか伝えてない。  その男の子とは高校に入学して知り合った。部活が一緒で、登下校のバスでも途中から一緒になる。そして、三年生になって初めてクラスが一緒になった。それで私が進路相談室で求人票を見ていたから事情を聞かれた。話してみたら理解してくれた。  男の子は「おめでとう」と言ってくれた。そして、都会に行くことを心配してくれた。だから私は行く都会の場所を教えて安心させてあげた。とっても心配性の男の子だから。  でも、驚いたのはその男の子がまだ進路を決めていない事だった。頭が良くて、スポーツも出来るからどこでも受かりそうなのに。
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