2.お姉さんの昔話

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 昔のことを話すのは好きではないのだが、このアンドロイドの助けになるのなら話してもいいかと思う。歩きながら話し始めた。 「私には双子の妹がいるの。顔も性格も瓜二つ。『2人で1人』なんてよく言われて、お揃いの服を着たりなんかもしていたわ。」  幼い頃は、それが嬉しかった。見た目も考え方も全く一緒。自分の理解者が常に隣に居てくれるだけで幸せだった。 「でもね、大きくなってくると事情は変わってきたわ。まず、妹とお揃いの服を着るのが嫌になってきたの。私は私なのに、周りの大人たちは私たちを『一緒』にしたがった。それがとても嫌になってきたの。」  アンドロイドは黙って付いてくる。。 「もう少し大きくなって能力に差が出てくると、もう地獄だった。見た目も考え方も同じだったはずなのに、妹は運動も勉強もできるようになった。そのかわりか、私はパッとするものが何もなかったの。周りからは『劣化コピー』なんて呼ばれたわ。」  アンドロイドがうしろで息を飲む。 「お姉さんは…どうしたんですか?」 「どうにもできなかったわ。でもね、それからもう少し大きくなって、色々あって、思うようになったの。」  私は立ち止まる。くるりと振り向き、アンドロイドの目を見て話す。 「この『記憶』を持っていることこそ、『私』の証明になるんじゃないかってね。確かに、私と妹は見た目も考え方も一緒だったわ。でも、妹には劣化コピーと呼ばれる記憶はない。この記憶は、私だけしか持っていないはず。この記憶があるから、あなたの気持ちも理解できるし、こうやって話すこともできているんだってね。」  アンドロイドはポカンとしている。 「あなたにも、『オリジナル』が持っていない『記憶』があるでしょ?あなたと『オリジナル』が同じプログラムだったとしても、その『記憶』があるだけで、あなたが『ミツキ』だっていう証明になると思うな。」  ミツキは目を見開いた。何かを掴んでくれたようだ。 「ま、だからって『オリジナル』を壊すのをやめてくれって言うつもりはないけどね。さっきも言ったけど、私アレが大嫌いだし。」  ミツキが「え。」と変な顔になりながら言う。 「さ、『オリジナル』はもうすぐよ。しっかり壊しなさいね!」  私はくるりと向き直り、ズンズンと進む。
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