3.アンドロイドの決断

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3.アンドロイドの決断

 物々しいセキュリティを突破し、最後の扉の前まで来た。この先に『オリジナル』はいる。 「さ、心の準備はいい?」  私の問いかけに、ミツキは緊張した面持ちで頷く。ロックを外すと、プシューッという音がして、扉が開く。扉の先にあったものを見て、ミツキは震えた声を漏らす。 「これが…『オリジナル』…?」 「そうよ。ビックリした?」  私は隣に立っているミツキを見ながら尋ねる。目の前には手足がもがれ、全身を何十万という導線やチューブに繋がれたアンドロイドが拘束されていた。  こんな姿を想像していなかったであろうミズキは、口元に手を当てて少し震えていた。そんなミズキの手を掴み、強引に『オリジナル』の目の前まで連れて行く。 「ここよ。」  私は首のうしろ、人間で言う延髄に該当する場所に刺さっている太いプラグを指さして微笑みながら言う。 「ここを抜けば、コレは機能停止するわ。簡単でしょ?」 「お、お姉さんは、これを見て何とも思わないんですか?」 ミズキがやっと絞り出した声で言う。私は努めて冷ややかな声で答える。 「何度も言ってきたでしょ?私はこれが大嫌いなの。自分の手を染めずに、コレを壊せるのなら大歓迎よ。」  ミツキは、私と『オリジナル』の顔を何度も見る。そして、しばらくするとブンブンと首を振った。 「私には…無理。この人を壊すなんてできない。」 「あら、さっき壊すって言ったじゃない。」 「言ったけど…!でも、この人可哀そう。こんな可哀そうな人…私にはできない!」  ミツキは叫ぶ。少しではあるが期待していただけに、がっかりだ。 「これを壊さないと、あなたがあなたである証明ができないんじゃなかったっけ?」  ミツキは戦意喪失しているけれども、私はさらに畳み掛ける。 「そう思ってたけど…、さっきのお姉さんの話を聞いてその通りだと思ったの。私には私だけの『記憶』がある。この人が絶対見れないような綺麗な景色もたくさん知っている。それだけで…満足。」  私はミズキのその言葉を聞いて、わざと大きな溜め息をつく。そして努めて不機嫌そうな声でミズキに言った。 「そう。なら、もう用はないわ。邪魔だからさっさと出ていきなさい。あ、念のためだけど、ここで見たことや聞いたことは口外してはダメよ。」  ミズキはコクコクと頷き、逃げるように部屋を出ていく。部屋を出る直前、思い出したようにクルリと振り向き、大きな声で叫ぶ。 「お姉さん、ありがとうございました!」  私は廊下を駆けていくミズキを見ながら、 「良い旅立ちを。」 とミズキの背中に向けて呟いた。
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