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館のうわさ
六月も終わりに近づいた炎天下だった。
一人の少年が山と山の間の砂利道を小学校に向かっている。籠には、ふくらみのあるサックが入っていた。
汗だくになりながら、雑木林と田舎道に囲まれた薄暗い山道を、瀬際はじめはきつそうに自転車を漕いでいる。
もう、午後四時過ぎだというのになんて暑さなんだ。
時折、陽の傾きかけた太陽を恨みながら、待ち合わせている小学校の校庭へとたどり着いた。
日陰では、スマホを弄っている同級生の柿谷敬幸がいた。
はじめが柿谷に近づいた。きょろきょろと見回しているがほかに人影はない。
「あれっ? タカだけ? 他は?」
アメリカ人の癖を真似たのか両腕を直角にし肩をすくませ、柿谷が『お手上げ』という諦めのポーズと表情を浮かべている。
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