館のうわさ

1/3
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ

館のうわさ

   六月も終わりに近づいた炎天下だった。  一人の少年が山と山の間の砂利道を小学校に向かっている。籠には、ふくらみのあるサックが入っていた。  汗だくになりながら、雑木林と田舎道に囲まれた薄暗い山道を、瀬際(せぎわ)はじめはきつそうに自転車を漕いでいる。  もう、午後四時過ぎだというのになんて暑さなんだ。  時折、陽の傾きかけた太陽を恨みながら、待ち合わせている小学校の校庭へとたどり着いた。  日陰では、スマホを弄っている同級生の柿谷敬幸(かきたにたかゆき)がいた。 はじめが柿谷に近づいた。きょろきょろと見回しているがほかに人影はない。 「あれっ? タカだけ? 他は?」  アメリカ人の癖を真似たのか両腕を直角にし肩をすくませ、柿谷が『お手上げ』という諦めのポーズと表情を浮かべている。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!