館のうわさ

2/3
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
 一ヶ月前のことだった。衝撃的な記事が地元の新聞をにぎわせた。  小学校の裏の雑木林。古めかしい昭和初期に、建てられたであろう三階建ての廃洋館があった。持ち主は行方不明のままに、市でも取り壊しの検討がされた。がしかし、予算の都合上、放置せざるを得えないらしい。  その洋館に変な噂話が絶える事はなかった。  昼間でありながら、洋館の周りだけ夜のように真っ暗に見えたり、館の中に入るたびに部屋の配置が変わっていたりと、不思議さがあった。  どの噂も洋館に入らせないように、大人が作ったでまかせに違いないと、はじめは思ったようだ。実際に幼少の頃からその館に、何度となく足を踏み入れている彼にはわかっていたことだ。  新聞によると、最近になって現地調査として、市役所の職員が派遣されたらしい。数人のうち二人は現在も行方不明のまま。ひとりは病院で療養し正気を失っているという。そんな見出しのついた記事で締めくくられていた。  のちに、現地の警察関係者は、その洋館を三回ほど調べるものの、特に異常がないこと、行方不明者の遺体やら遺留品がないことを知り、本格的に捜すことはなかった。捜索が打ち切られたのだ。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!