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数日後にも、はじめの通う小学校の教諭が館に踏み込んだらしい。それを職員室の前の廊下で偶然にも、はじめは聴いてしまった。
『あの館には、子供たちを近づけさせないようにして下さい。最近のゲームによくある朱色をした大きい箱が無造作に、何かを誘うように置かれていたのを記憶しています』
男の教諭は、他の教師たちに熱弁をふるっていた。
『昔から、あの付近で子供たちが遊んでいるところを、近くの住人が目撃しているようです』
ひとりの教諭が朝礼で発言したことで、職員の間で動揺が広がる。
最近、スマホを弄りゲームにばかり夢中になっていたはじめは、『大きい箱』に反応した。
ゲームのように宝箱といえる大きい箱には、間違いなく金塊や宝石があるに違いないと、そう思った。人一倍怖いもの知らずのはじめには、面白そうだと好奇心に湧く。
教室に戻るとさっそく隣の席の柿谷に、廃洋館への探索をしよう、と持ちかける。
柿谷は『廃洋館』という言葉を聞いて表情を硬くした。小声で呟き、
「はじめ、お前知らないのか? あそこの所有者さえ、一年前に行方不明になっているんだぞ! あの館はマジ、やばいって……」
「タカ、そんなこと俺に通用すると思っているのか! 俺は何度もあの洋館の中を探索したけど、何も起こらなかったし、こうして行方不明にもなってないだろ! それに宝を見つけて、行方不明者を救出できれば一石二鳥じゃンか」
「そうかもしれないけど……でも、そんなにうまくいくかなぁ?」
柿谷は不安な表情を滲ませながら、悩んだ。
「もし、おれたちが行方不明になったりしたら……」
「そんなことねぇよ! タカは心配性だな」
はじめは自信満々に声を張り上げる。
「そうじゃないんだ! あそこに入って悪い噂しか広まっていないから」
「じゃあ、俺ら以外に4人いればいいだろ! なっ、文句ないだろ!」
「う、うん……」
と、渋々柿谷は承諾した。
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