洋館のはこ

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洋館のはこ

 はじめの提案で今度の土曜日に、学校の校庭へ集合ということで、話が決まった。彼の賛同に隣クラスのタキザキ、カワセ、コミヤ、カワスミが名乗りを上げる。隣のクラスの中ではタキザキが先頭に立って、誘導していた。  校庭の脇に自転車を止める。はじめたちは、そこから歩いて学校の裏の雑木林を目指した。途中、カラスの鳴き声が、気になるほど響いていた。林の中は、意外なほど涼しかった。木漏れ日もなく、昼下がりを過ぎてまだ太陽が照らしているはずだった。が、洋館に近づくにつれ、冷気が段々と増しているように彼らは感じた。はじめは久しぶりの探索に不安感が拭えないでいた。  数年前から、小学校の授業や塾ではスマホやタブレット端末が普及した。外で遊ばなくなり暇があれば、ゲームに(いそ)しむようになる。自然の中への感覚に、少し鈍くなっていたことに、はじめは気づいたからだった。
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