洋館のはこ

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   数年前から、小学校の授業や塾ではスマホやタブレット端末が普及した。外で遊ばなくなり暇があれば、ゲームに(いそ)しむようになる。自然の中への感覚に、少し鈍くなっていたことに、はじめは気づいたからだった。  館に到着した。中に入り、懐中電灯を頼りに、館内のエントランスから周囲を照らしてみる。あちらこちらにある蜘蛛の巣の出迎えを受けた。はじめ以外、蜘蛛の糸に大騒ぎし、てんやわんやして慌てふためく。 「く、クモの巣だぁ!!」 「騒ぐなよ! たかが、蜘蛛の巣だろっ!」  最近、人が入ったとはいえ、すぐに巣を作る屋敷は、人気がないことを裏付けるのだろうとはじめは感じる。  各部屋は、木の扉だったのか、完全に朽ち果てている。足元に気をつけながら、浴室と思われる場所、台所だったと思われる場所、ゲストルームと思われる場所をまわっていく。天井からの崩れた残骸によろけそうになった。  しばらく、彼らは一階を探索していた。みんなでゾロゾロと歩くより、手分けして探索しないか? と、効率重視をはじめは提案する。がしかし、柿谷は反論する。はじめとは違い彼は、人一倍怖がりで慎重派だった。彼は、なるべく固まって歩くことを提案した。はじめ以外柿谷の意見に賛成する。はじめは多数決で柿谷に従うしかなかった。
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