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柿谷以外の四人の中で、はじめと同じに冷静だったのは、意外にもタキザキだった。
例の大きな箱のある部屋は、ニ階の一番奥にあった。そこはがらんどうで荒れ果て、壊れた窓から日差しがいっぱいに差し込んでいた。とても怪しい雰囲気にある部屋ではなかった。
奥に脚を進ませると、それは現れた。
大きい箱がふたつ並んでいる。みるからにゲームから飛び出したような、左側は朱色で、黄色い縦縞模様入りのものだった。右の方は夥しい真っ黒に包まれた不気味な箱だった。子供が、一人隠れられるほどのスペースのある大きさだった。どちらとも茶色く『古びた錠前』がしっかりとかかっていた。両方とも子供の力、六人がかりで箱全体を持ち上げようとしても、ビクともせず悔しさだけが残った。
はじめは地団駄を踏みながら悔しい顔を露にする。
「畜生! この中に絶対なにか入っているに違いないのに……」
柿谷にははじめの気持ちがわからないでいるようだ。
「そんな箱を開けることに、どうして夢中になるの? はじめ」
「だって、ゲームじゃ大概、こういう箱は宝があるってきまってるだろっ!」
柿谷の眼にははじめが、この箱の魔力に取り憑かれているように見えたようだ。
付き合いのみでついてきたタキザキが、
「とりあえず、今回は様子見でいいじゃないか」
「俺は高望みしても、家じゃすぐには手に入らないんだ!」
柿谷にははじめが焦って見えた。二度と訪れるつもりはない。そんな風に感じたようだ。
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