洋館のはこ

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「はじめ、何を焦ってるんだよ!」  柿谷の隣にいたカワセが、ぽつねんと呟いた。 「そういや、はじめの親って離婚して暮らしてたンだったな!」 「ああ、今、裁判所で親権を争っているんだ!」  柿谷は訝しく首を傾ける 「シンケン?」  はじめの右隣にいたコミヤも、考え込んでいる。 「父親と暮らすか、母親と暮らすかまだ決まっていないんだ!」  柿谷は合点がいったような顔つきになる。  コミヤがはじめに問いかけた。 「引っ越すかもしれないってこと?」  こくり、とはじめはうなずいた。 「今、父さんが週に一回顔を見せに来るけど、中学になったら他の町に転校するかもしれない」  はじめの左隣にいた小太りのカワスミが呟いた。 「ってことは、この館の探索も今のうちなの?」 「ああ……」  カワスミが、何か言いたそうだったが、 「ふうん……」とだけ呟き、黙ったままだった。  箱の錠前を睨みながら、 「けどさ、鍵がないと、この箱は開けられそうにないぜ」  箱の上に頬杖をつき、タキザキが文句を言う。 「……だよな」 すんなり、はじめは納得をした。  その後、はじめたちは二手に別れ探索する。三人一組で一階、二階で鍵を探した。  最初は怖がってやる気がなかった柿谷も、何も出ない雰囲気になると覚悟を決めたのか、一階を希望した。  はじめは二階の探索を担当した。もうひとつ上の階は時間があったら、ということで全会一致になった。探索を始めてから、どのくらいたっただろうか、手分けして探しても結局、鍵らしいものはなかった。  一階も同じだったらしく、残るは三階だとはじめは意気込んだ。しかし、なにげなく壊れた窓から空を眺めると、雲がオレンジ色に映えている。夕方になっているのだろうか、館の中が薄暗くなっていた。不気味な静けさの中で、カラスの鳴き声だけが異常なほどはじめの耳に聴こえてきた。
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