Stalkerー赤い下着ー

Stalker

　そして僕は、恵美を真正面に捉えて、意を決して口を開いた。
「ねえ、恵美ちゃん。気づいていると思うけど、僕は君のことが好きなんだ。君の気持ちもわかってる。僕たち、付き合わないか？」
　僕の想定では、ここで恵美が喜んで、笑顔で僕の胸に飛び込んでくるはずだ。僕はそれに備えて、両足に力を入れて踏ん張る。
　だけど、恵美は僕の胸に飛び込んでくるようなことはなかった。そして、笑顔を浮かべるどころか、呆気に取られたような顔をしている。何かが違う。僕はそう思ったが、もう僕は自分自身の気持ちを抑えることができなかった。きっと恵美は自分の想いが叶って呆気に取られているのだ。僕はそう考えて、恵美を抱きしめようと手を伸ばした。
　その瞬間、パシッという小気味よい音が辺りに響いて、僕の手に痛みが走った。僕の手は恵美によって払いのけられていた。
「恵美ちゃん、どうしたんだい？」
　僕は訳がわからず、恵美に尋ねる。恵美はじりじりと少しずつ後ろに下がって、僕との距離を取る。
「あの、私、別にあなたが好きだとか、あなたと付き合いたいとか思ってませんから」
　恵美の言葉は完全に僕を混乱させた。もしも恵美の言葉が本当だとしたら、これまでの恵美の行動と計算が合わない。