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考えた結果、僕は一つの結論に達した。恵美は照れ隠しをしているのだと。それはそうだ。こんなに職場に近い場所で、しかも駐車場なんかで告白なんかされたら、誰に聞かれているかもわからない。たとえ僕のことが好きだとしても、素直に喜ぶことなんてできないだろう。急いては事を仕損じると僕は自分に言い聞かせていたにもかかわらず、知らず知らずのうちに焦ってしまっていたらしい。
「ごめん、こんな場所でするような話じゃなかったね。場所を変えよう」
僕は恵美にそう提案した。だけど、恵美は冷たい目をして答える。
「いや、場所がどうとかいう意味じゃなくて、あなたとは付き合えません」
そう言うと、恵美は僕に背を向けて歩き始める。
「ちょっと待って!!」
僕は慌てて追いかけるけれど、恵美は、
「ついてこないで!!」
と歩調を速める。仕方なく僕は恵美と少し距離を置いて、その後を追う。10分ほど後を追っていくと、恵美はマンションの中に姿を隠してしまった。学生の一人暮らし向けワンルームマンションだ。
僕はただ慌てることしかできなかった。場所を変えるつもりのだけが、家に帰られてしまったら、話なんてできなくなる。それと同時に、僕は思った。きっと、恵美は僕を試しているのだと。僕の気持ちが本物かどうかを。それならば、本当に恵美のことが好きなのだと示してやろうと、僕は心に誓った。
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