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翌日から、僕は時間のある限り、恵美のマンションへと通った。もちろん、中に入ったりはしない。そんなことをしてしまえば、ストーカーになってしまう。あくまでも、外で恵美を待つだけだ。特に、土曜日と日曜日は殆ど一日中。そして、たまたま恵美と会えたときには声を掛ける。だけど、恵美は本当に疑り深いらしく、どんなに声を掛けても反応してくれない。いったいどれだけこんなことを続ければ僕の気持ちが本当だと信じてくれるのだろう。
だけど、僕も簡単に引き下がるわけにはいかない。そんなことをしたら、恵美をがっかりさせてしまうだけだ。それだけは何としても避けたかった。だから僕は、風が吹こうと雨が降ろうと、恵美のマンションに通い続けた。
そんな日々が一ヶ月くらい続いたある日、僕が会社から帰ってビールを飲もうと冷蔵庫を開けたところで、玄関のベルが鳴った。僕は出しかけていたビールを冷蔵庫にしまい、玄関に向かう。
「どちら様ですか?」
僕は魚眼レンズを通して外の様子を伺いながら尋ねる。すると、外にはスーツ姿の男性が三人立っている。前に一人と後ろに二人。そして前に立っている男は、懐から何かを取り出して、僕に見えるようにレンズに近づけ、
「警察の者ですが、開けてもらえますか?」
と告げた。僕の目には、男たちの姿の代わりに、警察手帳が飛び込んでくる。
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