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部屋に戻るなり、僕はタバコを咥え、火を点ける。ゆっくりと煙を吸い込んでから、同じようにゆっくりと天井に向かって吐き出す。目を閉じると、さっき見たばかりの小鳥遊の柔らかそうな胸の膨らみと赤い下着が脳裏を過る。どんなに他のことを考えようとしても、小鳥遊のことが頭から離れない。テレビを見ていても、食事をしていても、風呂に入っていても、小鳥遊のことで頭が一杯になる。そして、時間が経てば経つほど、その想いは強まっていった。
その日から僕にとって、土日の休日は退屈なものではなくなった。昼食と夕食は必ずコンビニで買うようにして、それ以外にも何かにつけてコンビニで買物をするようになった。その度に小鳥遊と軽い会話を交わす。会話を交わす度に、彼女も僕もよそよそしさが抜けていくような気がする。むしろ、小鳥遊の話し方は、好きな男に対する話し方のようにしか聞こえない。
少なくとも、僕が知っている限り、小鳥遊が僕以外の客とそんなふうに話をすることはない。よそのコンビニの店員と同じように、機械的にバーコードを読み取り、商品を袋に詰め、勘定を済ませて、商品を客に渡す。そういう意味でも、僕は小鳥遊にとって自分が特別な存在なのだと認識することができた。
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