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一ヶ月、二ヶ月と時間が流れていく。その間に、僕は何度も小鳥遊と言葉を交わし、彼女の情報を仕入れていく。相変わらず、あの日見た柔らかそうな胸の膨らみと赤い下着は、頭の中に鮮明に残っている。
小鳥遊の下の名前は恵美という。いつの頃からか、僕は自然と彼女のことを恵美ちゃんと呼ぶようになっていた。それでも、彼女は嫌な顔ひとつしない。単に客だから嫌な顔をしないで応対しているという雰囲気でもない。やはり、彼女は僕に好意を持っているに違いない。
だけど、どんなに時間が流れても、彼女が僕にその気持を伝えてくることはなかった。たしかに、店の中でいきなり僕に想いを伝えることなんてできないだろう。川野もいるわけだし、他の客だっている。それに、こういうことは、男がリードする方がかっこいいのだろう。とはいえ、僕だってレジに並んでいるときに、いきなり恵美に想いを伝えることなどできはしない。
お互いの気持は一致しているはずなのに、それを伝えあうことができないことに、僕はひどくもどかしさを感じる。こんな勝ち戦みたいな恋愛の始まりなんてそうそうあるわけもない。このチャンスを逃したら、いつまたこんなチャンスに巡り会えるともわからない。とにかく、僕はこのチャンスをものにして、恵美を恋人にしなければならない。
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