ミニチュアレンカ（ショート版）

電車とスマホとその中に

　電車の中でスマホを弄っている男子高生なんて、まるで珍しい光景ではないだろう。
　彼はいつも、電車に乗っている間、ずっとスマホに視線を落としている。ほかのものには目もくれず。
　彼の着ている制服は、夏の折なので上は開襟シャツにネクタイ。下はチェックのパンツ。お洒落だから私立高校なのかもしれない。
　知らない制服の彼は、随分背が高くて犬のような印象だった。髪はふわふわの茶髪で、それも犬らしさを強調している。
　その前の座席に座り、電車に揺られながら過ごす時間。ミルクティー色の髪をふたつにくくり、セーラーの夏制服を着て電車通学をしている美雪（みゆき）はここ半月ほど、彼のことを見るともなしに視線をやってしまっていた。
　それは彼の容姿が良いからでも（確かに並み以上の顔立ちではあるのだが）、スマホをずっと見ていることでもない。
　彼のそのスマホにぶら下がっているもの。それが気になっているからである。