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文字のチカラ
隣町は、小さい頃から家族や友達と訪れていたので迷うことはなかった。どこに本屋さんがあるのかも、どこが一番大きくて品揃えがいいのかも知っている。
ただ、過ごしている駅ではないので、西口か東口か、その程度は少し迷って、それでもすんなりと着いた。
この本屋さんは大きいというか、むしろビルがまるごとひとつ、本屋さん。
なんと七階まである。
階ごとに扱っている本は分かれていて、一階と二階はコミックス。三階はライトノベル。四階は普通の小説、五階は参考書……といった具合である。なので、探し物をするのには割合、見付けやすいのであった。
美雪が向かったのは四階である。小説のコーナーにあるに決まっているので。エスカレーターで四階までのぼる。上がっていく間にも、目にはいるのは、棚に収納された、あるいは平置きされた、本、本、本。
見ているだけで既にパワーがもらえるようであった。手に取ればもっと強く感じられるだろう。
四階へ入り、入り口でちょっと悩んだ。奥へ歩いていこうと思ったけれど、ビルが高いだけではなく、フロアもそこそこ広い。やみくもに歩くよりは、最初から案内を見てしまったほうがラクだろう。
最近は電子端末で情報が見られる。これほど大きい本屋さんなので、当たり前のようにそのシステムは導入されているようであった。
探している欲しい本があるのなら、タイトルを入力すればどのあたりにあるのか、そして在庫はあるのか、などということまで調べられる。
もしくは、そこまでではないけれど、好きな作家がいるので、新作があるかとか、なんとなくラインナップを見てみたいとか。そういうときの検索もできる。
よって美雪は電子端末に近付き、ちょっと悩んで『石川啄木』と入力した。
すぐに出てくる。勿論、詩歌の本のあるコーナーが出てきた。どうやらお店の奥のほうだ。
どの本に例の歌が収録されているかはわからなかったので、それは実物を見なくてはだろう。
気に入れば買いたくなるかもしれなかったので、いくつか本をタッチして、在庫があるかどうかをざっとチェック。何冊かはありそうだった。よって、そこで検索はおしまいにして、マップに示されていた通りのコーナーへ向かったのだった。
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