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「ああ、まぁ良いわ。
お主の頭がめでたいのは今に始まった事では無いしの。
えふおほ!」
老婆は独特な口癖で話を区切り、
鱈齢場十句くんの話題に戻した。
「つまり鱈齢場家で迫害を受けて来た姉が
弟の存在を容認する事は出来なかったと言う話しじゃな」
「何で!?
十句くん、あんなに良い子なのに!!
っげー可愛いのに!」
後光が射しているのに!
「鱈齢場韮子は異父の弟、十句くんを疎んじひたすら拒否した。
親の観ていない所で罵声を浴びせ、殴る蹴るなどの暴行を加えた」
「そんな…十句くんの体の痣は韮子さんが付けた傷だったのか!!」
世に言う「顔は目立つから腹を殴れ!」である。
「鱈齢場韮子はどうしても弟の存在が許せなかった。
彼を認めてしまえば自分の存在価値が完全に無に帰すと思ったのじゃな」
「それは論点の摩り替えやろ!?」
僕は叫ぶ。
言葉は自然に出た
そして何故か関西弁になっていた。
しかし、この時僕は静かに
明日児童相談所に行く事を決意する。
「がじゃ!
姉は弟を否定した、
しかし弟は姉を嫌いにはなれなかった。
父は違えど母は同じ、
血の繋がった肉親である。
十句くんは拒まれど食い下がった。
何度も姉に蹴られながら歩み寄り、対話の道を諦めなかった」
「十句くん…!!」
僕の涙腺は崩壊した。
これまで全ての事は老婆の作り話と言う可能性もゼロでは無い。
昨夜読んだラノベの内容がツボったので、誰でもいいから語りたいと思い立ちそのまま適当な男子高校生を見つけて吹聴している線も捨てきれない。
だが、僕は真実と信じた。
鱈齢場十句くんは罵倒され、蹴倒されようとも対話の道を諦めない。
和を以て尊しとなす
尊み溢れる男児なのだ。
可愛い可愛い子鴨なのだ。
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