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ルシアン王国の北、山を一つ越えた先に存在する北方民族との戦争が始まったのは三年前のこと、カザハナが十七の頃だった。領土最北の村が北方民族に襲われて僅かな村人を残して虐殺されたのである。
元々北方民族とは領土問題を巡って険悪な状態であったのだが、これが引き金となって両国の戦争が始まった。
幾度となくぶつかり合った戦いは半年ほど前から小康状態にあるが終わったわけではない。境に位置する砦は今尚多くの騎士が敵地の行動を見張っている。
カザハナも騎士団の一人として任務に就いていたが、先日、女王からの急な命令により帰国の途に着いていた。
次にこの都市に帰るのは北方民族を滅ぼしてからと決めていたカザハナにとってはまことに不本意な命ながら、この国の最重要人物からの呼び出しを蹴るわけにはいかない。
早急に馬を走らせ乗り換えながら十日、王都の外で馬車に乗り換えて故郷の地を踏んでも、カザハナの不満げな表情が緩むことは一度もなかった。
従者だけが居た堪れない空気の中、馬車は整列した城兵たちに見守られながら長い長い道のりを経て城の入り口に到達する。馬車が止まると、従者はすぐさま扉を開けて階段を設置し膝を突いて王族を下ろす従者の役目をこなす。
ああ、もう着いてしまったのか。
目を閉じ、感嘆の息を漏らした後、覚悟を決めたように顔を引き締め馬車から降りた。
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