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赤と紫
「ほんっと暑い。ひりひりと痛いくらい」女は手のひらで太陽を隠しながら、恨めしそうに空を見上げた。
隣の男が額の汗をハンカチで拭いながら言う。「そうだな……紫外線って最強だな」
二人は炎天下のなか田舎道を歩いていた。
確実に猛暑日だ。
「ああ、もう肌が赤くなっちゃうかしら――」言いながら女がはっと閃いた。「……でもあなたはどちらかと言えば赤外線ね」
「赤外線?」
「そう紫外線よりも赤外線」
「なんだよ急に。どうしてだ?」
女は口角を吊り上げてにやり顔を作った。
「ほら、あったかくて、思っていることが伝わって、でもそれは目に見えない」
「――し、紫外線だって見えないだろ」
「ほらほら、顔が真っ赤だよ?」
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