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傘で遅刻する方法
「何してるの? そんな呑気に歩いていると遅刻するわよ」
「やあ、おはよう。今日も綺麗だね」
「ふざけてないで、急ぎなさい」
「勘違いしてもらっちゃ困る。ぼくは時間に正確さ。故意だよ。故意に遅刻しているのさ」
「何のために?」
「簡単さ。誰かが遅刻すると、先生が怒鳴るだろ? ぼくの他に誰か遅刻してくるかもしれない。一緒に怒鳴られようという魂胆さ」
「なんじゃそりゃー、でも、面白そうね。わたしも参加するわ」
「よし来た。一緒に怒鳴られよう」
ぼくたちは、学校へと続く坂道を談笑しながら、だらだらと歩いた。彼女がとても話し上手だったからか、坂がいつまでも終わらなかった。
「大変。もう正午よ」
「あっちゃー、悪いことしたな」
「どうする?」
「この坂のせいだ。飛んでいこう」
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