和魂(にぎみたま)

1/12
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/67ページ

和魂(にぎみたま)

■和魂(にぎみたま)  49歳になった私が、有ることでお客さんを走って追いかけることになった。 その方はインターネットで私のページをご覧になって、他府県からわざわざ電車でご来店されたお客さんだ。 88000円のお支払いを1万円札9枚でお支払いいただき、2000円のお釣りをお渡した。 「遠い所から、ご来店ありがとうございました」 お客「こちらこそ、お陰で安く買えました。ラッキーです」  その言葉を最後に正面の自動扉から歩道に出るとJRの駅に行かれるようで、右側に向かって歩き始めた。 私は、正面歩道沿いの数枚のウインドからお客様の姿が消えた瞬間、黙礼をした。そして、いま発行したばかりの製品の保証書の控えを引き出しに入れ、カウンターに残っていた商品を、展示コーナーの棚に戻した。 再びカウンターに戻ると、カウンターの足元に二つ折れになった紙幣が落ちているのに気がついた。拾ってみると、なんと1万円札だ。 最初は、お客さんから頂いた9万円のうちの1枚をレジに収める直前に私が落としたものだと、思いつつ、レジの万札を数え始めた。 万札は9枚有った。 このお客さんの前の売り上げは、万札だけをセパレーターの底に収めているから・・今のお客さんの分はレジに有ることが確認出来た・・  まさか・・私には、まさかのそれしか推理できなかった。 『そうかお客さんがここで財布を開いた・・そして支払った9万円と一緒に、この万札がくっついて、落としたに違いない』
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!