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〈クロの散歩道・0〉
ある人が禁煙をしたらしい。
健康と金銭のことを考えて、という面もあるけれど、大きかったのは、仕事の異動に伴い「煙草を吸いながら雑談をできる相手がいなくなった」という理由なんだって。
確かにどうやら喫煙者にとって、煙草に火を点けてからの数分間って特別な時間みたいなんだよね。
その禁煙したっていう人、煙草自体はもう吸う気にならないけど、ああいった時間は好きだったって言ってるよ。
これから始まるのは、同じような「特別な時間」を日々迎えている一人の女の子のお話。
今夜も、彼女がライターを鳴らす、その音が聞こえて来るんだ。
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