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プロローグ
その日の朝、一番に感じたのは今まで経験した事がない程の凄まじい頭痛だった。
こめかみを押さえつつ目を開けると、見慣れた天井、布団。
昨日、心斎橋でしこたま飲んでたにも拘わらず、ちゃんと神戸市灘区に帰ってきているみたいでホッとする。
それにしても。
一人暮らしだと、自由気ままが過ぎて、ついつい深酒しちゃうのがいけない。
もう20代も後半に差し掛かろうとしているのに、いつまでもこんな事してちゃ、肌も髪もボロボロになってしまう。
今後は気を付けないと。
とまあ、反省はこのくらいにして。
薬、あったっけ?
重い頭を抱えつつ、よろよろと起き上がった瞬間、キッチンの方から冷蔵庫を開ける音がした。
一人暮らしの部屋で自分以外の生活音とか、サスペンスでしかない。
慌ててベッドに伏せて布団を被り直し、その隙間から目を凝らす。
ガサガサ……。
音は聞こえるものの、影になってよく見えない。
でも、誰かが居るのは確実。
そして招かざる客である事相違ない。
もう、二日酔いどころではない。
いつもの半分も回らない頭で必死に対策を考えていたその時、パタンと冷蔵庫を閉める音がした。
そしてこっちに向かってくる足音も。
トン、トン、トン、トン。
狭い部屋だから、足音は直ぐに間近に。
トン、ドン、ドン、ドン。
ベッドの直ぐ横で止んだ。
……。
布団の向こうに、不審者が居る。
お金が目当て?
それなら何で私の部屋なの?
こんなしがないワンルームのマンション狙わなくたって。
お金なんて、大してないのに。
……。
それとも、もしかして変質者?
私、このままレイプされて殺されちゃうの?
最近、ほうれい線が気になってきたとはいえ、死ぬにはまだ早過ぎる。
やり残した事だって一杯ある。
嫌だ。レイプも嫌だし、殺されるのはもっと嫌。
脳内は騒がしいのに、身体が硬直して全く役に立たない。
どうしようものなくて、ぎゅっと目を瞑って身体を硬くしていると、頭上から妙に心地よく響く低音ボイスが降ってきた。
「水菜さん、まだ寝てるん?」
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