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―――ジンは少年の名前を知らない。
保護者らしき青年は彼を『司書官』殿と呼んでいた。流石にそれが名前の筈も無し、少年本人に問うてみたらば、彼は心底不思議そうに「僕は『司書官』ですよ」と答えた。
『司書官』とは、官位の一種だろうか。しかし十歳そこいらの少年に地位が与えられるには早すぎるし、そも、『司書官』などという官位名は聞いた事がない。
ちょっとばかり、――お偉いさんの都合で下々の者に名前を呼ばれたくないのか?――などと邪推が掠めたが、流石にこの素直な少年を前にしては、在りえまい。
ちなみに青年の方は少年から“クラウン”と呼ばれていた。
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