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虎達が争い合って木の周りをぐるぐる回っていたらば、バターになった。そんな童話があったなぁ・・・とこれは軽い現実逃避。
実際にぐるぐると回っているのはジンと猪だ。正真正銘、本物の猪である。
どんなに山中で気をつけていても、野生の獣に遭遇してしまう時は遭遇してしまうのだ。
何はともあれ・・・現実には木をぐるぐる回ってもバターにはならない。
ジンは銃を肩から下ろして構えた。ジンを追ってきた猪は、いつの間にかその背をジンに向けている。
村の猟師に教えて貰った事だ。もし猪に追いかけられた時の対処法の一つ。
木の周りをぐるぐる回っていると、何故か追いかける方と追いかけられる方が逆転している事があるのだという。
あとはその無防備な背中に打ち込むだけだ。
本日の弾は六粒弾。通常は鹿猟に使われるが猪の足止めなんかにも使用される。
これを今回持ってきた理由は単純明快。この前のスラッグショットより威力が低いからである。出来る限り、『本』を傷つけたくない。だからスラッグは置いてきた。結果、持ち手で一番威力のあるバックショットを選ばざるを得ない。
ホンモノ猪相手では本来の用途通りにしか使えないだろう。
―――どうしてこう、弾の選択がうまくいかないのだろうか・・・と悩むのは後である。
ジンは猪に向かって発砲した。
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