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「 」
──死ぬのは怖い。
──こんな怖い思いを愛する人にさせたくないから、せめて俺の手で殺してあげたい。
涙ながらに訴えると、三島は感謝を口にして何度も頷いたが、ふと顔をうつむかせる。
『でも……一人は嫌だ』
『その不安もない。なぜなら俺は病で間もなく死ぬからだ。来ないかもしれない恐怖もないよ、俺はすぐに追いつく』
三島はそれを聞いて、腕の止血をしながら胸打たれたようだ。
三島にはいつも笑っていてほしい。
笑っているのが三島なのだから。
『それじゃあ俺が待っているのだから、お前も怖くはないだろう?』
治療が終わり、優しく抱き寄せられる。
その背に包帯のまかれた腕を回して、深く頷く。安らぎが溢れてやまない。
しかし三島と違い臆病はそうすぐ治らず、自分の世界に三島がいないなんて悲しくて泣きそうだとぐずる。
すると三島は言った。
『じゃあ名前も混ぜてしまおう。見た目もできるだけ同じにして、笑って、そして』
『スイが俺になればいい』
「水野 高幸は、三島 健治を、食べました」
窓の外で腕を広げて笑う三島、みーくんに、水野は笑顔で抱きついた。
落下死体は、二人分。
了
→後書き・解説
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